皆さんの会社では製品カタログを作っていますか? カタログには自社の製品を知ってもらうという重要な役割があり、ただの商品リストになるか、販売促進につなげる「紙の営業担当者」になるかは、実はちょっとしたテクニックで大きく変わってきます。制作を業者任せにせず、自分たちでコツを押さえた制作をすることで、コストダウンになるだけでなく、販売促進の効果アップも期待できます。それでは、やるべきことをひとつずつお伝えしていきます。
やるべきこと①:カタログの役割を設定する・カタログを使った販促フローを見える化する
製品カタログの目的・ターゲットを明確にする
カタログを作るときに一番最初にしなければならないのは、「どうして(なぜ)カタログを作るのか」という目的を明確にすることです。たとえば、特定の商品を特に売り込みたい、という目的であれば、メインとして売りたい商品を中心としてカタログの構成を考える必要があります。このようなゴールを考えず、手当たり次第に情報を放り込んでいくと、ページ数が際限なく膨れ上がったり、どの掲載内容も中途半端になるような事態に陥ってしまいます。
まずはカタログの目的をひとつひとつ書き出していき、その目的に沿って後ほど構成を考える必要があります。
また、目的とカタログのターゲットがあっているかも考えなければいけません。相手の知識によって商品の説明にどの程度ページ数を割くかなども変わってくるでしょう。たとえば現場の技術者をターゲットとしたカタログであれば、その方が使う機器に関してはある程度前提となる説明を省いてもいいでしょうが、購買担当者や経営者をターゲットにするなら前提となる知識についてページを割く必要があります。
カタログの5W1Hを明確にする
カタログを「いつ」「誰が」「誰に対して」「どんな目的で」「どのように」「どんな内容で」使うのかも、効果的なカタログを作るための重要なポイントです。たとえば、商談でカタログを利用する場合、「いつ」には「商談時」、「誰が」には「営業担当者」、「誰に対して」には「商談相手」、「どんな目的で」には「自社商品の紹介/ヒアリング/クロージング」、「どのように」には「紙カタログ(もしくは電子カタログ)や提案資料を見せながら」、「どんな内容で」には「商品比較表/目安料金/商品スペック」が入ります。
以下に例を挙げていきます。
商談でお見せする
- いつ:商談時
- 誰が:営業担当者
- 誰に対して:商談相手
- どんな目的で:自社製品の紹介/ヒアリング/クロージング
- どのように:紙カタログ(もしくは電子カタログ)や提案資料を見せながら。
- どんな内容で:商品比較表/目安料金/商品スペック(※持ち歩き/参照しやすい資料にする)
ダイレクトメールで送る
- いつ:カタログが新しくなったタイミング
- 誰が:営業担当者/広報担当者/マーケティング企画担当者
- 誰に対して:既存客/休眠客
- どんな目的で:顧客から問い合わせをもらうため
- どのように:郵送物として発送する
- どんな内容で:その商品を購入するとお役様にとってどんな有益なことがあるのか(※郵送可能な媒体で送る必要がある)。
展示会や見本市で配る
- いつ:展示会・見本市出展時
- 誰が:出展ブース駐在者(営業担当者?)
- 誰に対して:自社展示ブース来場者(見込み客)
- どんな目的で:自社商品の紹介
- どのように:ブース内での短期商談や初回の聞き取りで配布。
- どんな内容で:その商品を購入するとお役様にとってどんな有益なことがあるのか(※来場者の荷物にならないようにできるだけかさばらない形態にする)。
商品の納品時に同梱する
- いつ:商品納品時
- 誰が:営業担当者/商品発送業務従事者
- 誰に対して:商品購入顧客
- どんな目的で:購入品以外の商品紹介/新商品乗り換えやセット購入
- どのように:商品の納品時に同梱する
- どんな内容で:その商品を購入するとお役様にとってどんな有益なことがあるのか(※購入してもらった商品と合う内容にする。同梱しても商品に傷が付かないよう梱包などを工夫する。
Web展開を意識する
現代人が知らない商品名を見た場合、最初に行うのはGoogleに質問を投げかけることです。そして、検索結果にその商品の詳細が出てこなければ、購入のターゲットから外れてしまいます。BtoBビジネスでも購入に踏み切る意思決定の際にもっとも重要視されるのはWebサイトの情報です。
また、対面の商談が行えない場合でも、カタログを電子化してWebサイトに載せ、メールなどでお送りすることでお客様に情報を届けられるようになります。
カタログを作成するときはWeb展開に内容を流用できるように準備しておいたほうがいいでしょう。
やるべきこと②:カタログの仕様を決める
カタログの5W1Hを明確化すれば、次にやるべきことはカタログの仕様を決定することです。5W1Hに沿って、カタログに載せる内容をリスト化していきましょう。そして、それに沿ってカタログの仕様を決定していきます。
ページ数とサイズを決める
まずは5W1Hに沿って、カタログのページ数とサイズを決めましょう。一般的なカタログはA4サイズ(297mmx210mm)で作られていますが、たとえば展示会用であればお客様に持ち帰ってもらうためにカタログはより小型のB5(257mmx182mm)かA5(210mmx148mm)サイズにしたほうがいいですし、ダイレクトメールなどで送る・発送した商品に同梱するなら重量による送料の変化も考慮して、ページ数を少なくしたり、用紙を薄くするのも選択肢となるでしょう。
冊子の形状をカタログが取る都合上、ページ数は必ず4の倍数になります。なぜなら、書籍というものは二つ折りにした紙を重ねて中央の折り目をくっつけて作るものだからです。何ページのカタログを作るかを考えるにせよ、4の倍数のページ数を決めておくのが良いでしょう。
スペースマネジメントにしたがってページ配分を決める
商品カタログを作るときには、取り扱う商品それぞれにカタログの何ページをあてがうかを考えなければなりません。そのときに使う考え方が「スペースマネジメント」です。
スーパーの食料品の棚をイメージしてみてください。あなたが店長だとして、品質や利益率が良くお勧めしたい商品Aと、比較してさほどお勧めしない商品Bがあるとします。
売り場の大きさを変更することができない場合、あなたは商品AとBをどのように配置するでしょう?
多くの人は商品Aを来店者の手に取りやすい位置に、かつ売り場を広くとって置き、商品BはAに比べて狭い売り場に配置するでしょう。
これを「棚割り」と呼びます。
この「棚割り」の原理、実はスーパーマーケットだけではなく、広告や宣伝にも使うことができるのです。広告や宣伝に対してこの棚割りを使用する場合、「スペースマネジメント」と言う名前で呼ばれます。
スペースマネジメントについては、詳しくはこの記事を参考にしてみてください。
1ページあたりの情報量に注意する
1ページに大量の情報を入れてしまうと、分かりづらくごちゃついたカタログができてしまいます。情報量を増やそうとするとどうしても大量の文章を詰め込むことになりますが、そのようなカタログは内容を把握するのが難しく、商品購入につなげることが難しくなります。
人間がカタログを見たとき、まずはすばやく全体像を見て、それから興味がある部分を細かく確認するものです。ぎっしりと文字が詰まっている場合、内容をざっと把握することができないまま、内容を飛ばしてしまいます。
1ページ(もしくは、見開き)の情報は、視線誘導を意識して見やすい量を配置するのが良いでしょう。
どうしても1ページ内の情報量を増やしたい場合は、QRコードなどを利用し、Webサイトへのリンクを張るのもひとつの方法です。
検索性を重視する
カタログのページ数が増えるほど、検索性を意識しなければなりません。特に分厚いカタログでは、検索性を高めるガイドが必要となってきます。
そのため、カタログの上部(ヘッダー)や小口(サイドナビ)に各カテゴリの商品やページに容易に移動できるようなインデックスをつける必要があります。
この時、現在開いているカテゴリに色を付けて、他のカテゴリはグレー表記にするような方法で「今どこを見ているのか」が分かりやすいようにする必要があります。
たとえば、車両のカタログをイメージしてみてください。ページのサイドにインデックスとして「ワゴン」「コンパクト」「クーペ」などのカテゴリがあり、「ワゴン」の部分に色がついていれば、ワゴン関連の商品が現在のページで、次をめくればコンパクト、その次にクーペが来るとわかるでしょう。
このような方法によって、カタログの検索性が向上し、効果の高い広告を作ることができます。
同業他社のカタログをチェックする
同業他社が出しているカタログは、カタログを作る前に必ず参考にしたほうが良いです。なぜなら、カタログを作ってからでは他者のカタログには掲載されているけれど自社のカタログでは抜けている情報に気づくことができたり、あるいは他社のカタログのデザインや配置方法がよりよいことに気づくことができたとしても、一度デザインなどができあがってからでは修正にかなりの時間と費用がかかってしまいます。
まず最初の時点で同業他社のカタログをチェックして、構成に抜けがないか/やりたいデザインのイメージはこれでいいかをもう一度確認しておきましょう。
やるべきこと③:カタログ制作業務の見直し・改善をする
カタログをこれまでに何度か作っており、特に変える点もない、と思っていらっしゃるあなた。本当に変えなくてもいいのでしょうか。ちょっとした工夫で、カタログの制作コストを抑えたり、業務負担を軽減しつつ、より見やすい内容に変えることができるかもしれません。
費用対効果を意識する
あまりクオリティを落とさずに、カタログの印刷価格を下げるには、以下のような手段があります。
・大量印刷してロットを増やす
内容の更新がほとんどなく、かつ追加で印刷を何度も行う程度にカタログの利用率が高いのであれば、ある程度まとめて大量にカタログを印刷することで、1部あたりの費用を下げることができます。
・短縮版のカタログを作る
カタログのうち、お客様の人気が高い商品部分や、自社が売りたい商品の部分を中心に内容を再構成して、短縮版カタログを作るのもおすすめです。展示会や商談などにカタログを持っていく状況や、商品の梱包にカタログを同梱する状況では、短縮版のカタログのほうが便利ですし、コストも下がります。
・印刷用紙を薄くする
これまでのカタログより紙を薄いものに変えてみてはいかがでしょうか。紙が薄くなることでカタログの強度は下がりますが、かさばらなくなるという特徴があります。
自社の負担を意識する
カタログ制作は少なくとも数ヶ月、長ければ1年近い時間がかかる仕事です。通常業務と並行して行う場合、当然作業負担はかなりのものになります。そうした作業負担を抑えるためには、以下のような手段が効果的です。
・カタログ制作をシステム化する
担当者に専門的な印刷の知識があり、かつ掲載する商品がすべて完全にデータ化できたならば、自動組版ツールなどを利用して、カタログを半自動的に制作することが可能になります。
デザインなどの自由度は通常のカタログ制作に比べて劣りますし、ツールを使う準備のために最初はコストがかかりますが、一度テンプレートが完成してしまえば、あとは素材となる商品データなどをまとめるだけでカタログが完成するため、長期的にみればカタログ制作の労力をかなり下げられるようになります。
・カタログ制作を外注する
印刷会社によっては、カタログのデザインやページ構成など、もっともカタログ制作で大変な部分をすべて代理で作り、データを制作し、印刷やWebカタログ作成までワンストップで行ってくれる企業もあります。
そういった会社に制作を外注すれば、カタログ制作の労力を抑えることができます。
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