印刷というものは家庭用のインクジェットプリンタから、巨大な工業印刷機までさまざまな手段で行われています。その中で、商業印刷でもっともよく使われる印刷手段は「オフセット印刷」と「オンデマンド印刷」の2種類です。……といわれても、「オフセット/オンデマンドって何それ?」と思われる方もたくさんいらっしゃるでしょう。
そこで、この二つの印刷手法について、なるべくわかりやすく解説していきます。
オフセット印刷とは?
オフセット(Offset)印刷とは、版につけられたインキをゴムでできた「ブランケット」というローラーにいったん転写(Offset)し、さらに「ブランケット」を用紙に押し当てることによって印刷を行う技術のことです。オフセット印刷では版がダイレクトに紙に触れないために磨耗が起こりづらく、安定した品質で大量の印刷が可能という特徴があります。
現代のオフセット印刷には、アルミから作られた版に印刷データを直接焼きつけ、それを使って印刷するCTP(Computer to Plate)という技術が使われています。
オフセット印刷は現代のほとんどの商業印刷で利用されています。
オフセット印刷のメリット
オフセット印刷のメリットは以下のようなものです。
大量生産ができる
オフセット印刷は大量、かつ安定した印刷が可能です。
部数比ではかなり低コスト
オフセット印刷は大量印刷が可能であるため、1部あたりのコストは安く付きます。
高精度高品質
オフセット印刷は有版印刷であり、版も磨耗しにくいため、特にCTP印刷では色ブレが少なく高精度・高品質の印刷が可能です。
大サイズの印刷が可能
オンデマンド印刷機と比べてオフセット印刷機ははるかに巨大なため、A0サイズや菊全判サイズといった大きな用紙に印刷することが可能です。そのため、同じ用紙を使った印刷が複数種類ある場合、1枚の用紙にそれらをまとめて印刷する「付け合せ印刷」を行うことも可能です。
様々なインクを使った印刷が可能
基本的に決まったトナーでしか印刷できないオンデマンド印刷機と違い、オフセット印刷機はC・M・Y・K以外のインキに対応しており、金色や銀色、透明インクや蛍光インクなどを使った特別な印刷にも対応可能です。特に6色に対応したオフセット印刷機であれば、印刷工数を増やさず6色印刷などの多色印刷や特色を使った印刷が可能です。
オフセット印刷のデメリット
オフセット印刷のデメリットは以下のようなものです。
製版費用が必要になる
オフセット印刷は有版印刷のため、まず製版作業を行う必要があります。当然ながら版そのものの費用および、製版用のデータに変換するための費用や、版を焼き付けるための作業費が必要になります。
納期が長くなる
製版作業を行わなければならない分、余分に作業時間が必要になります。
多種小部数の印刷に向かない
製版費用や納期の長さのために、1000部未満程度の小ロット印刷では却ってコストがかかりやすいという問題があります(1000部を越えたあたりからオンデマンド印刷とコストが逆転し、低コストの印刷ができるようになります)。また、版を製作する都合上、チラシ100枚ごとに電話番号を変えるなどの一部を変更するような印刷物には、1種類ごとに版を作る必要があるためやはりコストがかかってしまいます。
オフセット印刷に向いているもの
オフセット印刷に向いているのは、大量印刷を行うチラシやパンフレット、多ページのため印刷量が多いカタログや冊子類などです。また、品質が重要な写真集などはオフセット印刷に向いています。また、大判のポスターなどはオフセット印刷でなければ仕様上印刷することが難しいです。
オンデマンド印刷とは?
オンデマンド(On-demand)印刷とは、コピー機のような電子写真方式やインクジェット高速印刷の印刷機を利用して、注文次第(On-demand)印刷を行う印刷方法です。
無版印刷であるため、版作成の時間が不要であり、そのため注文即印刷のようなすばやい対応が可能となりました。印刷技術の発達により、かつては低精度もしくは出力速度が遅すぎた電子写真方式やインクジェットの印刷機が改善され、十分に商業印刷に利用可能になったことに伴って、オンデマンド印刷は一気に発達しました。
オンデマンド印刷のメリット
オンデマンド印刷のメリットは以下のようなものです。
製版費用不要なため小部数の場合は低コストになる
オンデマンド印刷はオフセット印刷のように版を準備する必要がありません。当然、製版にかかる費用は不要であり、そのため小部数印刷を行う場合低コストになります。部数が1000部未満であれば、オフセット印刷より安価に印刷が行えます。
版が不要なため小部数であれば短納期で印刷できる
製版作業にかかる時間がない分、短納期での印刷が可能です。
オンデマンド印刷のデメリット
オンデマンド印刷のメリットは以下のようなものです。
精度や品質はオフセット印刷と比べて多少落ちる
オンデマンド印刷は版を利用しないぶん、色の精度や品質はオフセット印刷と比較すれば若干劣ります。とはいえ、それは精密印刷などには向かないという話であり、一般的な印刷であれば遜色ない程度の印刷は十分に可能です。
多部数の印刷ではコストや時間がかかる
多部数の印刷を行う場合、1部あたりの印刷コストはオフセット印刷に比べて高くなります。製版費用分を1部あたりの印刷コストが埋めてしまう1000部程度を境として、オンデマンド印刷とオフセット印刷の印刷コストは逆転します。
また、印刷物を1部出力するあたりのスピードはオフセット印刷に比べれば遅いために、一定量を超えるとかえって時間がかかってしまいます。
一定サイズ以上の印刷が出来ない
オンデマンド印刷機はA0や菊全判といった大きな紙を印刷する機能を持っていないものが多くあります。仕上がりサイズがA3を超えるような大判の印刷物は基本的にはオフセット印刷向けです。
決まったカラー以外は印刷が難しい
オンデマンド印刷機にはC・M・Y・K以外の特色を使った印刷機能がないものが多くあります。そのため、6色印刷などの特殊印刷には向いていません。
オンデマンド印刷に向いているもの
オンデマンド印刷に向いているのは1000部未満の小部数のパンフレットやチラシです。特に小部数で多種類の印刷は、無版印刷であるために1つ1つ異なった版を作る必要なく、安価な印刷が可能です。
たとえば、送り先ごとに名前を差し替える必要があるダイレクトメールなどは、オフセット印刷よりオンデマンド印刷のほうが安価かつ早く製作できます。
オフセット印刷とオンデマンド印刷の比較
メリット | デメリット | |
オフセット |
|
|
オンデマンド |
|
|
印刷物製作で気をつけたいこと
印刷物は作ることが目的ではなく、誰かに見せることで情報を伝えることが目的です。どこのだれに対して、どのような理由で情報を伝えるのかを考えて印刷物を製作する必要があります。
商品の販売や展示会などの来場を促進することを目的とするのか、企業の理念などを広報するのが目的なのか、そういった目的に合わせてどのような印刷物を作るのかを考える必要があります。
また、印刷というものはあくまでもひとつの手段です。より最適な手段が別にあるなら、それを使わない手はありませんし、印刷とほかの手段を組み合わせるのも効果的です。
たとえば、セールスプロモーションを行う時には、一つの手段だけを使うのではなく、トータルコーディネートを行うことが成功のカギです。セールスプロモーションは多くのお客さまの販売を促進するために行われるものであり、一つの手段だけでは狙っているお客様に届かないこともあります。様々なプロモーション手段を、多角的・複合的に同時進行することがもっともセールスプロモーションには効果的です。
ランディングページ製作や各種BPOサービスなど、印刷物以外のプロモーション手段が最適となる場合、それを提案してくれる会社であれば目的をもっとうまくこなすことができるでしょう。また、印刷を行うにしても、印刷物とWebプロモーションとの連携が行えるかという点は今後Webが情報のやり取りの中心になる以上意識しておくべきです。
土山印刷が商業印刷で目指すこと
土山印刷はただお客様からいただいたデータを印刷するのではなく、お客様が印刷を通じて解決したい問題や、達成したい目標をトータルサポートすることを目指しております。まずはお客様の要望を聞き取り、そしてお客様のお困りごと解決のために、デザインからサポートいたします。また、印刷を行う前に、お客様の目標解決のために最適の工程を考えて、通常のオンデマンドやオフセット印刷に限らず、6色RGB印刷やワイドUVインクジェットなどの特殊な印刷・加工をご提案いたします。
また、ランディングページの製作や、印刷に付帯する配送サービスやバックオフィス業務など、お客様の目標達成のためのさまざまなサービスを提供いたします。