コロナ禍は商売の流れを大きく変えてしまいました。JCB消費ナウおよびナウキャストの調査では、2021年5月の時点でネットショップ(ECサイト)の伸長は前年比+21.1%と上昇基調が続いており、一方で対面での販売は2021年1月時点で20%前後減少傾向にあります。
このような状況で、大手ネットショップに頼るだけでなく、自社でネットショップを立ち上げる企業も増えています。
そこで、無料でネットショップを開業するための基礎知識と、無料サービス・有料サービスの違い、メリットとデメリット、開業までのステップなどを紹介いたします。
ネットショップとは
言うまでもありませんが、ネットショップとは商品やサービスを販売するWEBサイトのことです。Amazonや楽天市場といった大手ネットショップから、個人開業のネットショップまで規模は様々ですが、WEBを通じて商品を販売できればネットショップと定義できます。
ネットショップ開業のステップ
ネットショップ開業には、以下のようなステップがあります。
①大まかなイメージを作る
実店舗でも、店舗イメージは重要ですよね。どのような客層をターゲットにするのか、立地条件は何で、値付けはこの程度、などと考えて、それに合わせて内装や扱う商品などを決定するのが普通で、それが甘ければ最悪お店が潰れてしまいます。ネットショップは不動産を買う必要がないためもう少し楽ですが、それでもターゲットとする客層や、それに合わせた商品やデザインをイメージしておくのは大切です。
②陳列する商品を選ぶ
店舗のイメージが決まったら、次は陳列する商品を選びましょう。実店舗を持っている場合はとっくにやっていることでしょうが、もしも店舗を持っておらず、店舗経営の経験もない場合は、商品や材料の仕入れ値と仕入れられる数の把握や、商品の保管や梱包を行う場所、配送の段取りなどをきちんと準備しておくのが大事です。また、値段付けの時には商品を直接店舗で手渡すのではなく、配送しなくてはならないのを忘れないようにしましょう。
③利用するネットショップサービスを選ぶ
どのようなネットショップにするのか、店舗イメージやランニングコストを勘案して選択しましょう。ネットショップサービス選択は実店舗における立地条件と同じように重要なため、後々のことも考えて選択するのがよいでしょう。後でサービスを変えるとなるとかなり苦労します。
ちなみに、初めてネットショップサービスを選ぶときに見落とされがちであるものの、かなり重要な点は「どのような決済サービスに対応しているか」です。お客様が購入をあきらめる理由として大きい理由の一つは「そのネットショップが自分のクレジットカードに対応していない」からです。けれども、個人がクレジットカード会社と契約するのはかなり骨が折れます。決済サービスの幅が広いネットショップを選びましょう。
④商品の写真と説明文を用意する
商品の写真を撮影し、サイズやスペックなどを計測し、用途やメリットを端的に買いた説明を用意しましょう。これは非常に重要な作業であり、ネットショップは接客担当者の代わりに「ささげ担当」、つまり撮影・採寸・原稿の担当者を用意すべき、とまで言われます。
ネットショップでお客様が商品情報に触れる方法がこの「ささげ」です。実店舗であればお客様が実際の商品を手に取り、そこに店員が声をかけますが、ネットショップではそんなことはできません。かわりに「ささげ」したもの、つまり商品の写真、サイズやスペック、用途やメリットがあるわけです。
「ささげ」のクオリティを上げるのは、実店舗での接客のクオリティを上げるのと変わらない効果があります。外注業者への依頼を行ってでも、ここはクオリティを上げましょう。
⑤サービスに商品を登録、開業!
あとはネットショップサービスに商品を登録すれば、開業できます。
と、このように開業するハードル自体は高くはありません。きちんとやろう、とするならそれなりに工夫が必要ですが、不動産をチェックし、立地などを検討するのにかなり手間が必要な実店舗よりは難易度が低いわけです。さらに、ネットショップサービスにはメリットがあります。
ネットショップのメリット
ネットショップのメリットは以下のようなものです。
開業のハードルが低い
ネットショップを無料で開設できるサービスもあります。もちろん、無料なのはたいてい開設時の料金だけで、多くのサービスは商品販売時の手数料や月額手数料などが必要なのですが、スタートコストが必要ないことは新規参入のハードルを下げます。
さらに、スマートフォンやタブレットからでもネットショップを作ることができるため、サーバーなどを購入・維持する必要はありません。
24時間対応が簡単にでき、接客コストが小さい
ネットショップ開設サービスなどを利用してプラットフォームさえ作ってしまえば、ただお客様に買ってもらうだけなら応対は不要になります。
さらに、お客様からの質問や意見などに対しても、メールやチャットボットなどを利用すれば、ある程度対応を自動化できます。
商品を梱包し、送る作業は必要なものの、接客のために掛ける時間コストは小さくなり、その時間を別のことに使えます。
販売エリアが広くなる
実店舗であれば距離に縛られますが、ネットショップならそれより遥かに広い地域のお客様に利用してもらえます。それだけ販売エリアが広くなるため、一地域の店舗であっても、日本全国や、ひいては世界に対して商品を売れます。もちろん国際対応する場合配送コストや多言語対応などのコストはかかりますが、それでも実店舗よりずっと対応は簡単です。
ネットショップのデメリット
もちろん、ネットショップ開業には以下のようなデメリットもあります。
競争が激しくなる
開業のハードルが低く、販売エリアが広い、というのは、それだけ多くの商売敵が存在するということに他なりません。これまでは地域のお客様だけを相手にしていた小規模店舗でも、ネットショップ開業をした時点で大手企業を始めとした全国の企業を相手にすることになります。同じジャンルの商品を売っている、他のネットショップとお客様を取り合うことになるため、そちらに勝つための販促戦略が必要になります。
オリジナリティを出しづらい
特に無料のネットショップ開業サービスの難点として、使える素材の種類に制限があるという点があります。また、有料サービスであっても、HTMLやCSSといったWEBデザインの基礎知識が必要になります。また、どうやっても「見やすく」「使いやすい」ネットショップのデザインというものは、突き詰めていけば似通っています。実店舗であれば内装や雰囲気を上手く使ってオリジナリティを出せますが、ネットショップ”だけ”ではオリジナリティを出せなかったりします。
集客力が弱い
一番のネットショップの欠点は”集客力が弱い”ことです。立地条件次第で立ち寄ってくるお客様ができる実店舗と違い、ネットショップには「ふらっと立ち寄るお客様」というものはありません。基本的に目的があって検索して、ネットショップにアクセスしてくるお客様がほとんどです。しかし、競争が激しくオリジナリティを出しづらいため、お客様をネットショップだけで呼ぶのはとても難しいのです。
無料サービスと有料サービスの違い
加えて、無料のネットショップ開設サービスには追加の欠点がいくつかあります。
集客力の違い
無料サービスと有料サービスの違いは、参入障壁の差です。要するに、タダのものにはそれだけ人が集まり、競争が激しくなるのです。有料サービスに集まる人数は少なく、分け合うパイの切れは大きくなりますが、無料サービスはといえば、始めるのは簡単でも続けるのは大変です。
加えて、無料サービスは有料サービスより、後述したデザイン自由度の小ささなどで集客力に劣るため、自分でランディングページを別に制作したり、広告を出す・ダイレクトメールを送るなどの別途集客手段が必要になります。
デザインの自由度
無料サービスで作ったネットショップはデザインの自由度が小さく、それだけ各商品ページの外見は似たようなものになります。もちろん、ネットショップを始めたばかりであり、かつWEBデザインに詳しくないなら、それでも十分に便利です。しかし、WEBページのデザインだけで人を寄せるのは、無料サービスではなかなか厳しいものがあります。
商品を購入させる導線を作るには工夫が必要で、ただ商品を載せているだけでは売れるものも売れません。ゆえに、商品の特徴やメリットなどを商品ページにただ書くだけでなく、ネットショップ外部での集客手段を用意しましょう。
容量や商品数の制限
無料のネットショップ開設サービスのほとんどは、アップロードできる画像のファイルサイズや、データの合計量、載せられる商品の数などに制限を設けています。
商品を多種販売する予定の場合、制限について調べておくのがいいでしょう。
主なネットショップサービス5選
主なネットショップサービスには、以下のようなものがあります。
BASE
初期費用・月額費用が無料のネットショップ開設サービスです。商品が売れたときに決済手数料を取る代わりに、売れない場合はお金がかかりません。
ネットショップ運営のセミナーや、テクニックを載せたWEBサイトなど、初めてネットショップを運営する方向けのサポートがそろっているほか、店舗のブログ開設サービスやInstagramとの連携といったコンテンツマーケティング支援も行っています。
また、「BASEかんたん決済」という決済サービスがあり、殆どのクレジットカード決済やコンビニ支払い、携帯キャリア決済などに対応しています。
一方でショップのWEBデザインはテンプレートを組み合わせて作るもので、デザインの幅はあまり広くないこと、間口がとても広いためその分ライバルが多いこと、また多売する場合は手数料が高くつくこと、などは欠点です。
間口がひろく、初心者に優しく、売れるまでサポートしてくれる、という形のネットショップ開設サービスを求めるなら、BASEがいいでしょう。一方で店舗経営に慣れており、大きく儲けることが目的なら、別のネットショップサービスがおすすめです。
STORES
STORESは無料・有料でのネットショップ開設サービスです。初期費用は無料であり、月額で課金の代わりに決済手数料が下がるサービスと、月額無料の代わりに決済手数料が上がるサービスを選択できます。
実店舗販売でも使えるキャッシュレス端末付きの決済サービス「STORES決済」があり、殆どのクレジットカード決済やコンビニ支払い、携帯キャリア決済だけでなく、実店舗でのキャッシュレス決済にも対応しています。
加えてSNS連携機能によって、SNSを使った販促・集客機能があります。
一方で無料では機能制限がそれなりに多く、アクセス解析が行えないなどの欠点があります。
決済手数料が大手サービスでは最安値であり、対面販売と実店舗販売を両立したい、対面販売が中心ではあるものの、同時にネットショップ運営を本格的にしたいと思っている方にSTORESは向いています。
Shopify
Shopifyはカナダ発のネットショップ開設サービスであり、世界175箇所で展開しています。有料サービスですが、14日間の無料体験がついています。
最大の特徴は多言語・多国家対応力であり、海外向けの商品発送にも対応しています。くわえて、カスタマーレビューの追加・アフィリエイト連携・メールマガジン自動制作サービスなどを拡張して追加できる機能があります。機能の幅の広さは他のサービスの追随を許しません。
また、「Shopifyペイメント」という決済サービスがあり、AmazonPayやApplePayといった決済にも対応しています。
一方でサポートの手厚さは国産サービスに比べては弱く、月額費用は高めに設定されています。また、多機能であるゆえに、使いこなしきれない場合はもったいないことになるでしょう。
ネットショップ運営に慣れており、事業を拡大したいという方にはShopifyは向いています。
ネットショップには紙広告が効果的
無料のネットショップを開設する場合、集客力の弱さを補うために、ネットショップへの導線となるランディングページや、ダイレクトメール、SNS広告などの販売促進施策が必要です。
でも、殆どのネットショップは、別立てでランディングページを作ったり、メールマガジンを送ったりしています。WEB販促を行うのはネットショップでは「当たり前」。残念ながら、WEB販促だけでは差別化が難しいことも多いでしょう。
実際、ネットショップを利用されている方なら、実体験としてどこのネットショップも似たようなWebクーポンサービスやランディングページ、メールでのセールス告知を行っているのを知っているでしょうし、そうした告知メールが未開封のままメールフォルダに溜まっていることはよくあるのではないでしょうか。
だからこそ、重要なのはWEBでの告知だけではなく、紙の販売促進施策を組み合わせることです。
早稲田大学と富士フィルムが行った実験では、ダイレクトメールとWEBメール販促を組み合わせた場合、ECサイトのアクセス数が2倍以上、商品の注文数は4倍以上、クーポンの利用率は4倍から5倍以上になることがわかっています。ダイレクトメールは、WEB販促との組み合わせで高い効果を発揮します。
集英社と上智大学が行った実験では、Eメールカタログと紙カタログを使った販売促進施策では、ネットショップへのアクセス率はほぼ同じだったものの、購買率は紙カタログが17倍以上の差を付けて上回りました。
このように、紙のカタログは、Eメールと同じようにネットショップにある程度アクセスさせ、それ以上の確率で商品を買わせる力があります。
もちろん、ランディングページを使ったWEB販促と組み合わせれば、効果はさらにアップします。
もしネットショップを開設する場合、土山印刷にご相談ください。
土山印刷が作るカタログやダイレクトメールは、マーケティング理論に基づいて、デザインや企画段階からサポートするだけではなく、配送や効果測定までサポートします。
さらに、WEB販促との組み合わせに効果的な「スマートDM」や、DMがデジタル上で動くくじとなる「デジくじ」サービス、ダイレクトメールやカタログの素材からWEBのランディングページを制作するサービスなども承っております。
ネットショップで商品を買わせたいなら、WEB販促と紙販促を組み合わせる、土山印刷のスマート印刷をぜひともご利用ください。