自社商品の魅力をたくさんの人に知ってもらうためには、ブランディングが必要です。
と簡単に言われても、ですよね。
ここでは、企業やBtoBビジネスにおけるブランディングとは何なのか、ブランディングする上で抑えるべきポイントは何か、を紹介します。
ブランディングとは何か?
ブランディング(Branding)とは、もともとは貨物や荷物などに焼印を押す行為のことでした。隊商や商売船が大量の荷物を運んでいるところを想像してください。
運びやすいように、荷物は同じような木箱などに収められています。いざ目的地について、商品を売りさばこうとすると、一目でどこに誰の商品が入っているのか分からない。
そんな手間をなくすため、誰がこの品物の所有者なのかを識別するために、焼印(Brand)を押すようにしました。
時代が進むにつれて、「ブランド」という言葉は少しずつ変わってゆき、「顧客によって特定の商品やサービスが、類似した他の商品やサービスから識別されていること」という意味になりました。
そして、商品を識別させるための様々な手法を「ブランディング」と呼ぶようになりました。
例えば、「炭酸飲料」と言われて、「コカ・コーラ」という特定の商品がぱっと思い浮かぶとすれば、それはコカ・コーラがほかの商品に対して識別されているということになります。
「バッグ」と言われて「グッチ」や「エルメス」が思い浮かぶなら、それはグッチやエルメスがほかの商品に対して識別されていることになります。
このように、消費者の心の中で、「炭酸飲料と言えばコカ・コーラ」「バッグと言えばグッチ」などと商品名が識別されているとしたら、それは「商品がブランディングされている」ということになるのです。
ブランドの構成要素
ブランドには5つの構成要素があると考えられています。
それらの要素について、説明していきます。
ブランドの立ち位置(ブランドポジショニング/Brand Positioning)
ブランドの立ち位置とは、ブランドが何を目的として、誰のために存在しているかを表すものです。
以下のような説明ができなければブランドとは言えません。
「(ブランド名)」は「(ターゲットとなる顧客層)」の「(ニーズ)」に対して、「(ブランドが提供するもの)」を提供することで、「(メリット)」を実現する。
競合他社と比べ、この商品は「(差別化要素)」の点で優れている
例えば、コカ・コーラで考えてみましょう。
「コカ・コーラは炭酸飲料を好む層の”すっきりした飲み物が欲しい”というニーズに対して『カフェインと自社調合のスパイス入り飲料』を提供することで、『スカッとさわやかな風味を楽しむ時間』を実現する。競合他社と比べ、この商品は『さわやかさ』という点で優れている」
こんな説明ができれば、その商品は「ブランドの立ち位置」があるということになります。
ブランドの人格(ブランドパーソナリティ/Brand Personality)
よいブランドには、単なる差別化にとどまらない個性というものがあります。
その個性がどのようなものなのかを明確にするのが「ブランドの人格」です。端的に言えば「そのブランドの人柄はどんなものですか?」と聞かれて、ちゃんと答えられなければならないのです。
自社のブランドがあたかも人間であるかのように、ブランドの持つキャラクターを考えてみましょう。
例えばGoogleはスラングとして「グーグル先生」と呼ばれることがあります。
これは「検索したら大概のことについて、表面的にせよ知識を得ることができる」というGoogleというブランドの明確な個性です。
100人ブランドについて知っている人物がいたとして、そのブランドを擬人化するとすれば、ほとんどの人間が同じようなキャラクターを作るような個性があれば、強いブランドと言えるでしょう。
なにより、個性を明確に打ち出せば、商品の利点と欠点のうち、利点は目につき、欠点は愛嬌になります。
ハーレーの大型バイクと言われれば、マッチョでカッコいい革ジャンのお兄ちゃんお姉ちゃんたちが爆音を鳴らしながらハイウェイを駆け抜けるところをイメージするでしょう。
ハーレーはとにかくでかくて馬力があってカッコよくてマッチョな乗り物というイメージが付いているため、ものすごく重くて一回倒れると簡単に起こせないとか、燃料を食うとか、置き場所に困るとかそうした欠点は全く気になりませんし、むしろ欠点も魅力のうちです。
ブランドの想起性(ブランドアソシエーション/Brand Association)
ブランドの名前を聞いた途端、ぱっと思いつくキーワードやイメージがあれば、それが「ブランドの想起性」です。
「キユーピーマヨネーズ」と聞けばローズ・オニールの作ったかわいらしい人形を、「任天堂」と言えば赤い帽子をかぶった髭のおじさんを、「黄桜」と言えば河童を思い浮かべるように、良いブランドというものは強烈なイメージを想起させます。
もちろんキャラクターである必要はありません。例えばアップルであればあのリンゴのマークとデザイン性の高い様々な機器を思い浮かぶでしょうし、キリンビールならラベルに描かれた麒麟の姿や舌の上でぱちぱちと踊るビールの味が思い浮かぶでしょう。
ブランドの物語(ブランドストーリー/Brand Story)
ブランドのバックヤードには共感される物語が必要です。
例えば、100万円で清水の舞台から飛び降りる思いでワインを買うとします。
その上で、
「シャトー・ウンタラカンタラ、1965年産、100万円」
「シャトー・ナントカカントカ、1965年産、南フランスの土壌の養分が最も凝縮された年にブドウ園で収穫された選りすぐりのブドウを伝統的な作法で樽詰めして45年間熟成させた、世界には100本きりしかないワイン、100万円」
の2つの商品があったとして、普通同じ100万円なら後者を買おうと思いますよね。
これは後ろの商品に物語があったからです。南フランスの伝統的な農園で取れた選りすぐりのブドウで作られた、世界に100本しかないワインが100万円だって? お得じゃないか! 買うっきゃないね! そう思わせるのが物語の力というものです。
もちろんこんな具体的な物語である必要はありません。高級商品である必要もありません。
極端な話、ワインじゃなく1000円のどぶろくであったとしても、山奥の村の合掌造りの家で仕込んだとか、毎日数千本を製造する酒造工場の中で特に良い発酵のものだけを選んでどぶろくにしたとか、そういうバックヤードが分かるだけで何となく選びたくなるものなのです。
このようにブランドを印象付けるものが「ブランドの物語」です。
例えば、アップルはいかにもカリスマ経営者っぽいスティーブ・ジョブズが次々とデザイン性に優れた新商品を発表したり、商品からどんどんボタンがなくなっていってつるつるになったり、マイクロソフトのWindowsをけなすCMを打ったりすることで自分のところに「アップル製品は芸術家気質でクリエイティブでユーモアが分かるやつが作っている」という物語をユーザーに伝えました。
レッドブルは「レッドブル、翼を授ける」というCMを打つだけではなく、様々なスポーツ選手を気前よく支援し、自社のサイトでスポーツニュースを伝えることで「レッドブルはスポーツプレイヤーに対して翼を授ける」という物語を伝えました。
このように、ブランドの物語というものは、ブランドの消費者に対して、ただ商品の利点を伝えるだけではなく、商品そのものに共感させる力があります。
ブランドの約束(ブランドプロミス/Brand Promise)
ブランドというものは、明瞭にせよ不明瞭にせよ消費者に「このブランドは、こんなメリットを自分たちに与えると約束してくれている」という期待を与えているものです。
そのような、消費者が掛けている期待が「ブランドの約束」です。
そして、そうしたブランドの約束というものは、作り手と消費者の両方が認識していて、守られている限りはブランドの価値を高めます。
例えば(実際の商品を出すと差し支えるので、架空の商品を例にします)「100年かけても破れない暗号・生体錠付きチタニウム合金裏打ち50センチ厚金庫」という金庫が売られていた場合、消費者はその金庫がたとえ直接「中から勝手にものを持ち出すことは100%不可能です」と伝えていなかったとしても、セキュリティについてまず安心と思っていいという約束を得るわけです。
そして、そのような厳重な金庫の中から重要書類や貴金属などが忽然と姿を消したら、消費者は「約束が破られた」と思ってしまい、ブランドに傷がついてしまうのです。
ブランディングのメリット
ブランディングを行うことには、消費者・販売者の両方に大きなメリットがあります。
順に例を挙げていきましょう。
消費者にとってのメリット
ブランディングされた商品を買うことは、消費者にとって例えば以下のようなメリットがあります。
“はずれ”を引きづらくなる
どうしても炭酸飲料を飲みたくなり、自販機のところに行ったとします。すると、残念ながらいつも買っている商品はことごとく売り切れ。代わりに、これまで一度も飲んだことがないコカ・コーラの新フレーバーと、おそらくは地方ローカルの同じく一度も飲んだことがない炭酸飲料が売られているとします。その場合、好奇心の強い人は見たこともない炭酸飲料の方を買うでしょうが、そうした人は比較的少数派でしょう。どちらも飲んだことがない状況でも、コカ・コーラの新フレーバーを買う人の方が多いでしょう。
それは「コカ・コーラ」という商品がブランディングされているため、多くの人々は「まぁコカ・コーラの新フレーバーならそう期待からはずれることはないかな」と思って購入に踏み切るからです。
これがブランディングの強みです。ブランドというものは利点が良く知られているために、「とりあえずこっちで」という選択肢になり、リピートさえしていれば滅多に悪いものをつかまないという安心を与えることができます。
付加価値が得られる
ブランドの構成要素の項目でお伝えしたように、ブランドには人格や物語があります。
100万円のワインは1000円のワインに比べて1000倍美味しいかと言われればあまりそんなことはないでしょう。ですが、100万円のワインには100万円支払うだけのブランドの力(希少価値などのストーリーや、高級品というパーソナリティ)があるわけです。
そのような付加価値があるからこそ、人はブランドを購入するのです。
販売者にとってのメリット
販売者にとってもブランディングはメリットとなります。
リピート率の向上
しっかりとしたブランドができてしまえば、多くの消費者はその商品を買い続けることになります。よほどのこだわりがない限り、マヨネーズを買う時にはキューピーマヨネーズを何となく選ぶのと同じで、ブランドというものは知名度が高いほどリピート率が上がるという利点があります。
新商品の開発が簡単に
一度特定の商品のブランディングに成功すれば、あとは「あの商品を出した企業の新製品」という理由で、新商品に手を伸ばす方は多くなります。
アップルが全くこれまでなかったような商品を出しても、とりあえず買ってみる人が出てくるのは、まさしくブランディングの成果なのです。
その結果、新商品の評判が出そろうまで買い控える人を減らすことができ、新商品の宣伝コストを低く抑えることができるようになります。
価格競争する必要がなくなる
100万円のワインのたとえにあったように、ブランディングに成功すれば、1000円のワインと価格競争を行う必要がなくなります。
もちろん「安い」という点がブランドの立ち位置である場合(例えば、『早い、安い、うまい』をブランドプロミスにしている吉野家など)は別ですが、そのようなブランドでなければ、最安値を狙い続ける価格競争をしなくても商品をコンスタントに売ることが可能になります。
商標権や特許権による保護を得られる
ブランドの名前は登録商標になりますし、製造プロセスは特許権、ブランドのデザインは意匠権として法的に保護されます。
ブランディングをするために必要なこと
ブランディングはこのように非常にメリットの高いものなのですが、ではどのようにブランディングを行えばよいのでしょうか?
例を挙げていきます。
自社商品(サービス)・自社の状況を知る
ブランドの構成要素で述べたように、ブランドには「立ち位置」「人格」「想起性」「物語」「約束」が必要です。それらの5つの要素があって初めて、ブランドというものは成り立つのです。
ゆえに、最初に行う必要があるのが自社商品の強みを分析することです。分析の方法でポピュラーなものは「3C分析」「SWOT分析」「PEST分析」でしょう。
3C分析
3Cとは、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つを指す言葉であり、3C分析とはこれら3種類の点についての現状を積み重ねることで、商品を分析する方法です。
「顧客」とは現在の商品を取り巻く顧客のニーズや市場の状況についての現状です。
「競合」とは競合商品などの状況や新規参入・代替になっている商品についての現状です。
「自社」とは自社が商品に振り分けられる予算、リソース、現状のビジョンなどについての現状です。
3C分析を行うにあたっては主観をなるべく入れず、現在の率直な状況を積み重ねる必要があります。あくまでもファクトベースで事実を積み上げていかなければ、かじ取りを誤るでしょう。
PEST分析
PESTとは、自社や商品を取り巻いている「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つについての事実を集める手法です。
「政治」とは法律・条例や税制の変化など、自社の商品に影響を与えるような政治的な動きのことを指します。例えば、食品であれば食品についての軽減税率や原材料輸入についての規制緩和などが行われる場合、それらが「政治」のカテゴリに入ります。国内だけではなく、海外から原材料輸入や輸出を行っているのであれば、それらの国の経済状況もチェックする必要があります(例:原材料を輸入している国家の政治的不安定など)。
「経済」とは現在の景気の状況、株価、為替変化、インフレ率などを指します。政治カテゴリと同じく、国内だけではなく、海外から原材料輸入や輸出を行っているのであれば、それらの国の経済状況もチェックする必要があります。
「社会」とは社会の流行や考え方、インフラや考え方の変化などを指します。例えば新型コロナによって社会の衛生への関心が強くなり、三密回避などが言われるようになった状況や、少子高齢化、男女平等の考え方などが「社会」ジャンルにあたります。
「技術」とは自社に変化を与える新技術のことを指します。例えば、スマートフォンが人口に膾炙した結果、多くのWebサイトはスマートフォン対応が必要になり、コンピュータの需要は減少しましたし、新聞や文庫本などの需要も大きく減少しました。ここまで大きな発明ではなくても、ちょっとした技術開発で商品の現状というものはがらりと変わるもので、できる限り技術についての事実を集めなければなりません。
3C分析・PEST分析は事実をひたすら集め、それをベースに考えるものです。
そのような事実をさらに分類して考える手法としては、SWOT分析というものがよく使われます。
SWOT分析
SWOTとは、商品や自社サービスの「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字であり、SWOT分析とはこの4つの指標を分析する方法です。
「強み」とは商品や自社サービスが競合に対してすぐれているとアピールできる様々な利点であり、自社内部でより高めることができる点を指します。
「弱み」とは商品や自社サービスが持っている欠点であり、自社内部で改善することが可能な点です。
「機会」とは商品や自社サービスが売れるであろう様々な外部のチャンスであり、自社がそれを変えることはできないものです。
「脅威」とは商品や自社サービスの売れ行きを悪化させかねないリスクであり、自社が変えることがやはりできないものです。
この4つに商品の特徴や取り巻く環境について調べた事実を分類することで今後の戦略を考えやすくなります。
これらの分析によって、ブランドの構成要素が何であるかを決めて商品開発を行い、それを大いにプロモーションすることが、ブランドの作り方です。
戦略を考え、プロモーションを行う
一度戦略が決定すれば、その次に行うことはプロモーションです。分析の結果もっとも良いと思われるプロモーション戦略を考え、実行する必要があります。
全てのプロモーションは、分析によって判明した商品の強みをブランドの構成要素に落とし込んで、それを明確に伝えるものでなくてはなりません。
ブランドの成否を決めるのはこの宣伝です。想起されない、物語や約束が伝わらないブランドというものはそもそもブランドとしては失敗しています。
ブランディングにはプロモーションが不可欠
いくら分析が良くても、プロモーションが上手くいかなければブランディングは失敗です。
よく行われるプロモーション戦略には、以下のようなものがあります。
メリット | デメリット | |
マス媒体 |
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イベント |
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製品カタログ |
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店頭セールス |
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ダイレクトメール |
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屋外広告 |
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また、プロモーション手法としては手垢が付いたと思われがちな紙媒体のプロモーションですが、Web媒体との組み合わせを行うことによって大変高い効果を発揮することができます。
特に、Web媒体では再現できない質感や、モニターに依存しない色表現、触覚への作用などを紙媒体は行うことが可能です。
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鮮やかさの理由はインキをCMYKの4色から、オレンジ・グリーンを追加し6色に増やしたため。
これにより、TsuchiyamaRGB6はRGBカラーの標準色であるAdobe RGBを約85%、通常のCMYK印刷より20%多く再現することに成功しています。
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気軽にRGB印刷を行うことができます。
Tsuchiyama RGB6について詳しくはこちらからどうぞ!
「トータルコーディネート」がプロモーション成功の鍵
セールスプロモーションを行う時には、一つの手段だけを使うのではなく、トータルコーディネートを行うことが成功のカギです。
セールスプロモーションは多くのお客さまの販売を促進するために行われるものであり、一つの手段だけでは狙っているお客様に届かないこともあります。
また、複数の手段を取るにせよ、それが首尾一貫していなければ、効果は低くなってしまうでしょう。
ゆえに、様々なセールスプロモーション手段を、多角的・複合的に同時進行することがもっともセールスプロモーションには効果的です。
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土山印刷は、印刷だけでなく、印刷に付帯する各種サービスも含めて、セールスプロモーションの上流から下流までをサポートいたします。
一貫してセールスプロモーションを行われるときには、ぜひとも土山印刷にご相談ください。
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